LUCIENNE DAY SILK MOSAICSエキシビションレポート

LUCIENNE DAY SILK MOSAICSエキシビションレポート

15 NOVEMBER, 2024

LUCIENNE DAY
SILK MOSAICS
1975 – 1993

2024年10月にロンドン・ウィグモアストリートの店舗で行われたルシアン・デイのエキシビションの様子をご紹介します。

ルシアン・デイ(1917–2010)は、20世紀のイギリスにおける革新的なテキスタイルデザイナーの一人です。今回のエキシビションは、彼女の死後初めて、ルシアンの「シルクモザイク」に焦点をあてたものです。個人のコレクションや美術館から厳選した作品が一堂に会し、公共空間向けに制作された複雑な大規模作品から、宝石のように繊細な小規模作品まで、美しく繊細なテキスタイルを間近で鑑賞できる貴重な機会となりました。

1951年の「フェスティバル・オブ・ブリテン(ブリテン博覧会)」で脚光を浴び、ヒールズやエディンバラ・ウィーバーズなどの先進的な企業向けに、斬新なモダンプリントの家具用の生地を発表したことで広く評価されました。彼女は、戦後初期の楽観的で先進的な気分をとらえた、抽象的なパターン制作の新しいスタイルを先駆けて確立し、優れた色彩感覚によって、伝統にとらわれない有機的かつ幾何学的な新しいイメージを生み出しました。

ルシアン・デイは、壁紙、陶器、テーブルリネン、カーペットなど、他の分野のパターンデザインでも才能を発揮しました。また彼女は、家具デザイナーである夫のロビン・デイと共に、長年にわたりジョン・ルイス・パートナーシップのデザインコンサルタントを務めました。

インダストリアルデザイナーとして最も知られていますが、後年は一点物のテキスタイル・ハンギング(壁掛け)作品の制作に注力しました。彼女が「シルクモザイク」と呼ぶこれらの精緻な作品は、色とりどりのシルクを抽象的な幾何学模様に、丁寧に手作業で縫い合わせた長方形の帯から作られています。著名なテキスタイルアーティスト、アニ・アルバースの作品と同様に、彼女のシルクモザイクは伝統的な制作技術に基づきながらも、モダンでどこか時代を超越したような魅力を放っています。
今回、ウィグモアの店舗で行われたエキシビションでは、1970年代後半から1990年代にかけての20年間に制作された約200点のユニークな作品の中から厳選した作品を紹介し、彼女の多様な作品の中でも重要な一面にスポットライトを当てました。

1970年代にはイギリスの繊維産業が衰退し、ルシアンは時代の変化に次第に違和感を覚えるようになりました。独立してさらに創作活動を続けるため、新しい表現方法として、色とりどりのシルクを縫い合わせて作る壁掛け作品を考案しました。「シルクモザイク」という名称は、個々の単位が非常に小さく、ローマのモザイクに使われたテッセラ(小片)を思わせることから付けられました。ガラスのテッセラが持つ鮮やかで輝くようなきらめきが、シルクモザイクの色鮮やかな染色されたシルクによく似ています。

ルシアンは自らの作品を、古くから女性の家事とされていたパッチワークと意識的に差別化をしていました。手間のかかる手縫い作業は、熟練した縫製技師(ヘンリエッタ・ブルックスやルシアンの姪、カリン・コンラディ)に依頼し、自身はデザインに集中しました。そんな彼女のデザインを完成させるためには、テキスタイルという要素が欠かせませんでした。彼女は特にインドやタイのシルク生地の色と質感を好み、2色の糸を使ったシルク(経糸と緯糸が異なる色で織られている)の微妙な色合いや深みを活かすことで、作品にさらなる繊細さと深みを持たせました。シルクモザイクの柔軟な表現手法は、彼女の卓越した色彩感覚を存分に発揮できる場となり、微妙な色調の変化や鮮やかな色の対比を自由に作り出すことができました。

ルシアン・デイは、後年のキャリアで「シルクモザイク」の作品を個展で積極的に展示しました。彼女の作品は、ヴィクトリア&アルバート博物館、シカゴ美術館、マンチェスターのウィットワース美術館、スウェーデンのヨーテボリにあるローシュカ美術館など、名のある美術館でも収蔵されました。彼女のシルクモザイクは、彼女の創造的な生涯の集大成といえる作品です。このエキシビションは、2001年にロンドンのバービカン・センターで開催された2人の共同回顧展「ロビンとルシアン・デイ – 現代デザインの先駆者たち」以来、これらの重要な後期作品が再び集結した初めての機会となりました。

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CALENDAR

2025年のマーガレット・ハウエルカレンダーの内容は、シルクモザイクのセレクションが使用されます。

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