LIFE NOTES

様々な分野で活躍する方々の創作の現場を訪ね、リラックスした空気の中で交した対話を記すLIFE NOTES。キャリアを振り返り、日常を顧みながら、それぞれの衣服への想いや、日々の生活で大切にしていることが語られています。

今回登場いただくのは、伝統を継承しながらもかつてない手法で盆栽の魅力を国内外に発信する平尾成志さん。

1つ知れば3つ分からないことが出てくる

盆栽って終わりがないんです。僕は5年修行してから独立しましたけど、1日ひとつは学びがあるし、1つ知れば3つ分からないことが出てくる。だから5年かかってやっと、盆栽の「ぼ」の字がわかってくるような感じだったし、今でもまだ木に教えてもらいながら、ずっとトライ&エラーを繰り返しています。木はちゃんと四季を感じて成長するから、ちょっとした変化を、毎日見ていないといけません。

忙しいという字は「心を亡くす」って書くからこそ、僕は心が亡くならないようにゆとりを持たせるし、 こだわりを持つことで人生は豊かになると思います。まじめに遊ぶっていうんでしょうか。僕にとっては命懸けの盆栽も、これからはじめる人にとってはやはり趣味の領域ですし。この新しい盆栽園も寝食を忘れて自分で作りましたけど、出来上がっていく様が楽しくて仕方なかったですね。とにかくこの場所をたくさんの人に見てもらいたいです。

盆栽は、未完のアートとも言えるかもしれない

着る服に関しては色の強いものは選ばないですね。主に白か黒で、シンプルなもの。だから究極的には一枚のシャツやTシャツだけで格好良く見えることが一番じゃないかと思っています。仕事の側面で考えても、木に対して僕は黒子の存在ですので、マーガレット・ハウエルの「着た人が育てる服」という考え方に共感を覚えます。今着ているこの服の質感とか着心地が全然違うし、肌に近い感覚があります。良い服を選ぶという自分の拘りを加えることで生活が豊かになりますね。

盆栽は、未完のアートとも言えるかもしれない。でも僕は自分のことをアーティストとは捉えていません。アーティストはゼロからイチにするけれど、すでにあるもの=イチから組み立てていくから職人だと思っているんです。マーガレットさんもご自身のことを職人っておっしゃることには尊敬しかないですね。だって言葉とは裏腹にそう言うだけで職人を超えている様に感じるし、それは彼女が生きていくうえでの姿勢じゃないかと思いますから。

平尾成志
盆栽師 (成勝園園主)
徳島県三好市池田町出身。京都産業大学在学中に訪れた東福寺は重森三玲作・方丈庭園に感銘を受け、日本文化の継承を志し、さいたま市盆栽町にある加藤蔓青園の門を叩き 弟子入りする。師事していた、故加藤三郎との言葉「盆栽を国内外問わずいろんな人に伝えられる人間になってくれ」を胸に、修業に励み海外へと活動の幅を広げる。様々な国で盆栽のデモンストレーション・ワークショップ、さらにパフォーマンスを行い、平成25年度文化庁文化交流使の拝命を受け、4か月で世界11ヵ国を周り日本固有の文化である盆栽の美意識とその楽しみ方を教えるとともに、盆栽で新しい表現を試みる。
https://seishoen.com/

DIRECTOR: KYO KUBOYAMA
PRODUCER: YUKI KOIKE
CINEMATOGRAPHER: DAISUKE ABE
PHOTOGRAPHER: RYUSUKE HONDA
STYLIST / CO-DIRECTOR: HIDERO NAKAGANE
TEXT: MAKOTO MIURA

*価格はすべて消費税込みです。

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