LIFE NOTES

様々な分野で活躍する方々を訪ね、リラックスした空気の中で交した対話を記すLIFE NOTES。キャリアを振り返り、日常を顧みながら、日々の生活で大切にしていることやそれぞれの衣服への想いが語られています。

今回は誰もが知る音楽⼀家に生まれ育ち、デビュー26年目。母として、アーティストとして活躍の場を広げ続ける坂本美雨さんが登場。

日常の中でもっといろんなことが創造的にできる

このONIBUS COFFEEさんは近くに住んでいたので、よく通っていました。娘と歩いているときにたまたま見つけたのがきっかけ。子供ができてからの生活は、すべてが変化しました。自分の創作に時間がいくらでも使えていたことがとても贅沢なことだったと思うし、時間の使い方にメリハリが出たというか。お迎えまでの30分で原稿を仕上げたり、出番直前まで授乳したり。でもそれは切り替えというよりむしろ物事がシームレスになって、歌が自分の日常に近くなったように感じています。

音楽に関していえば、最初から仕事とは思っていなかったかもしれません。むしろ仕事以上の、人生の記録のようなもの。ただ両親を含め、周りに大きなことを成し遂げている人が多かったこともあり、自分に課せられるスタンダードが高いところにあったので、焦燥感もありました。でも、年を重ねるにつれ日常の中でもっといろいろなことが創造的にできるはずだし、それをもっと楽しもうと思えるようになりました。

無駄なものがない、シンプルな生き方

マーガレット・ハウエルのことはもちろん昔から知っていました。ご本人に関しても、無駄なものがない、シンプルな生き方で、自分もそんな境地に辿りつきたいと共感を覚えます。実際に着てみると、肌に直接触れる部分がとても気持ちいいし、一番感動的なのは靴下。どんなブランドでも変わらなそうなものが、実は全然違うと思えるのはすごいことですよね。

衣食住の「衣」として彼女が服を作っていることが、とてもよくわかります。わたしも歌が特別なものとは思わないし、自分が特別とも思わない。母親になれば子守歌を歌うし、人間はそもそも歌う動物。歴史を遡って村の歌い手に例えるなら、雨が降らないから歌うことだってある。日常に根付くものとして歌も服も存在しているはずだし、マーガレットさんが服で人の側に居るようにわたしは歌で、歌うことで人の側に居たいと思います。

坂本美雨
ミュージシャン
1997年「Ryuichi Sakamoto feat. Sister M」名義で歌⼿デビュー。⾳楽活動にとどまらず、ナレーション、執筆、演劇など多方面に活躍中。2015年第一子を出産し、自身のSNSでは娘と愛猫”サバ美”との暮らしぶりを綴る。昨年デビュー25周年を迎えた。

DIRECTOR / STYLIST: HIDERO NAKAGANE
PRODUCER: YUKI KOIKE
CINEMATOGRAPHER: DAISUKE ABE
PHOTOGRAPHER: RYUSUKE HONDA
HAIR MAKE-UP: YOSHIKAZU MIYAMOTO
TEXT: MAKOTO MIURA

*価格はすべて消費税込みです。

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