MHL. WORKWEAR BLUE

丁寧な手作業と、人と環境に優しい循環型。
伝統的な藍染の魅力が詰まったコレクション。

古来、国内外で愛されてきた藍染。植物染料「藍」を用いた染色方法として、日本においては1000年以上の歴史を誇る。今シーズンのMHL.では、キーカラーのワークウエアブルーを採用したコレクションがローンチされ、藍染を施したアイテムもラインナップ。タッグを組んだのは東京青梅市にある染色工房の老舗「壺草苑」だ。

一口に藍染といってもその技法はさまざまで、壺草苑がこだわるのは「天然藍灰汁発酵建て(てんねんあいあくはっこうだて)」という江戸時代を中心に行われていた昔ながらのやり方。藍染職人たちが一枚一枚、手作業でゆっくりと時間をかけながら染めていく。壺草苑の工房長、村田徳行さんは、その魅力をこう語る。

「天然藍灰汁醗酵建てで染めた藍は、色を重ねれば重ねるほど、赤みを帯びて輝きを増していくのが特徴です。化学染料をどのように配合しても、決して出すことのできない色合い。明治時代に来日した外国人たちは、日本人が藍染の着物を着ていたのを見て、“ジャパンブルー”と名付けました。そういった歴史背景を含め、誇れる日本独自の技術なのです」

天然藍灰汁醗酵建ては、化学薬品を一切使わないため、まったく害がないということも魅力だ。毎日何時間も扱う職人の手が荒れることなく、身につける人には防虫効果や抗菌作用、UVカット効果なども期待できる。さらに堅牢度が増し、色落ちがしにくいなど、染色法自体はとても手間がかかるが、クオリティの高さは世界でも類を見ない。実は「本藍染」「正藍染」と銘打っても、天然藍に化学薬品を加えたり、発酵させていなかったりするものも多い。そこで天然藍灰汁醗酵建てにこだわる職人たちは、明確に区別するために、あえてこの名称を使っているのだという。

藍染の“藍”は、タデ藍という植物を乾燥させ、一年かけて「すくも」という原料を作ることから始まる。壺草苑では、すくもの産地として知られる徳島県で、県内に数名しかいないといわれる、すくも生産に携わる藍師と契約。藍染の染液をつくることを「藍を建てる」と言うが、すくもを甕に入れ、灰汁、日本酒、ふすま(小麦の外皮)、石灰を足し入れ、徐々にかさを上げながら液を発酵へと導く。これらを朝晩、棒でかき混ぜ、酸素を含ませ発酵させると、やがて1週間ほどして、モコモコと泡が盛り上がってくる。その様子を「藍の華が咲く」というが、藍の酵母菌はアルカリの中でしか生きられないので、この状態をキープするために常に甕の中を整えておく必要がある。藍を建てはじめてから1週間ほどすると、ようやく布を染められる状態になる。

「藍の植物には膠(にかわ)が多く含まれています。色素自体の粒子が大きいので、繊維の中まで入り込みにくい。だから僕らは回数を重ねることで、徐々に繊維の中に染み付かせるような努力をして濃くしていく。化学薬品を使えば、1〜2回ですぐに染まります。とても効率はいいけれど、簡単に付くということは、簡単に剥がれやすいということでもある。薄いオブラート上のものを回を重ねていくことで、急に色が落ちるようなことにはなりません。堅牢性が増すのは膠質の成分とその含量分が少しずつ繊維を覆っていくからなんです」

一枚一枚、手作業で染めたものは、身につけるうちにだんだんとアタリが出てきて味わいにつながっていく。さまざまなアパレルブランドにオーダーされることが多い壺草苑だが、MHL.との取り組みは、自分たちと同様に丁寧なつくりとこだわりの深さを感じるという。

「イギリス発祥のブランドということで、クラフトマンシップを感じさせるつくりのこだわりがありますよね。MHL.のウエアを通して、日本古来の伝統である藍の良さを再認識してもらえることは世界にアピールすることにもなる。僕たちの技術をかけ合わせることで、より魅力的なアイテムになると確信しています」

さらに、天然藍灰汁醗酵建ての藍染は“循環型“の染め物だと村田さん。使い終わった染液は畑に肥料として撒くことで、そこで育つ野菜へと繋がっていく。 「天然藍はどんなものでも汚染しないというのが原則としてあり、使い手、作り手、そして環境にも優しいことから、これからの時代にこそ再認識されるべき技法だと思っています。なぜこんなに手間をかけてまで、化学染料でなく、昔ながらの染色方法にこだわるのか。それは、発色の良さ、着心地の良さ、身体への優しさ、堅牢性、色の落ちにくさなどすべてを兼ね揃えているから。まずは、身につけてもらうことがいちばん。袖を通せば、そのつくりの良さをすぐに実感してもらえると思います」

FILM MAKER: NORIO KIDERA
WRITER: CHIZURU ATSUTA

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