様々な分野で活躍される方に
MHLで選んだギフトについて聞いたインタビューコラム。
「SPBS本店」は、2008年にオープンした東京は奥渋谷の神山商店街にある人気ブックショップだ。この店の元店長であり、現在はマネージャーとして店づくりや新規事業を手がける鈴木美波さん。作られた背景がきちんとわかるMHLが好きだという彼女に、代官山店で選ぶ贈り物について話を聞いた。
−同僚への贈り物にはニット帽と手袋を選ばれましたね。
長くお世話になったスタッフに、感謝の気持ちを込めて選びました。この時期の定番で、色味もかわいくて、本人に似合いそうだなと。本に愛情を持っていて接する素敵な女性なのですが、この手袋は本を扱うときにもぴったりで、シンプルなデザインだから、普段からつかってくれたらうれしいです。
−自分自身に選ばれたのはどのようなものでしょう。
これは思わず「もってそう!」と言ってしまったくらい、自分にフィットしていました。起毛感のある厚手のオックス生地を製品染めで仕上げられたもの。タフな生地感と独特な色味が気に入って、仕事着としてぴったりだなと思って。自分は仕事と生活が地続きな働き方をしているので、仕事でもプライベートでも着られるものがいい。そういう意味では、自分のライフスタイルに馴染んでいる感じがしました。
−ご自身で購入するのは、そういったものが多いですか。
ブランドの背景や作り手の顔が見えるものに出会うと、「ワードローブに加えたい」という自分の気持ちのスイッチがすっと入って買うことが多いです。私はどちらかと言うと、ハイブランドより作っている人の気持ちに共感できるようなものに対して、欲しいという気持ちが高まりますね。
−その作り手のことはどのように知るのですか。
仕事で知ったブランドや作家さんが多いです。特に丁寧に作られていたり、こだわりの強い背景を知ったら、もう買わなきゃ、と思うこともしばしば。本や雑誌の記事を読んで興味を持つことも多いですね。
−もの選びの視点で影響を受けた人や出来事はありますか。
書店員になりたての頃、『マーガレット・ハウエルの家』という本がいくつかの独立系書店に置かれていて、手に取ったことを覚えています。デザイナーご本人の生活が垣間見えて楽しかったです。服と本の違いはありますが、マーガレットさんのもの選びの視点に影響を受けてブックセレクトをしているところもあります。例えば、私たちのセレクトは、こういう服を着ている人はこういう本が好きだろうな、以前はこういう物語を好んでいたから、次はこんな本をおすすめしたらどうだろう、と誰か具体的な人を想像することから始まります。生活の延長線上にあるものから、何か発見に繋がるような本を揃えたいと考えています。
−マーガレット本人は、衣服はあくまでも生活の中のものであって、いわゆるファッションとは少し違うと考えています。自分のことをファッションデザイナーではなくて、クロージングデザイナーと言うのもそのことを表しています。
トレンドを追っているわけではないんだけど、服作りはその時代に合わせてアップデートされていますよね。私たちの本のセレクトもそれに近いです。
−では、誰かに贈り物をするときも、その人の生活の延長線上のものを選ぶことが多いですか。
家族やパートナーなど一緒に生活をしていれば好みを知る機会が増えますが、友人や同僚たちは仲が良くても実際にどんな生活をしているかはわからないので、日々の関わりの中から想像して選ぶことになります。相手に喜んでもらえたらそれが自分の喜びにもなる。好きなものや覚えているエピソードをたくさん拾い集めて、そこに自分の思いを重ねて贈ることができたらいいなと思っています。
FOR COLLEAGUE
HAT ¥11,000 GLOVES ¥4,500
FOR MYSELF
SHIRT ¥22,000SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS BOOK事業本部マネージャー 鈴木美波
1987年生まれ。埼玉県出身。大学在学時より書店、図書館勤務を経て、合同会社SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSに入社。SPBS本店店長を約3年務め、現在はBOOK事業本部マネージャーとして、店舗マネジメント、新規事業企画に携わる。
合同会社SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERSについて
「本の文化をすべての人に」をビジョンに掲げる本と編集の総合企業。現在、奥渋谷の本屋「SPBS本店」、渋谷ヒカリエShinQs内の「CHOUCHOU」、11月1日に開業した渋谷スクランブルスクエア内の「+SPBS」の3店舗を運営している。SPBS本店に併設されている本社オフィスでは、編集部を中心とした社員が働いていて、出版物の制作、店舗運営、イベント企画、webコンテンツ制作など幅広い事業に取り組んでいる。来年4月には都内に2つの新店舗をオープン予定。
PHOTO : NORIO KIDERA
TEXT : CHIZURU ATSUTA